安田研究室の軌跡


  1. 安田研究室の誕生

     筑波大学に安田研究室が誕生したのは、昭和52年(1977年)4月である。筑波大学に大学院修士課程環境科学研究科を新設するということで前任の神戸商科大学経済研究所から招聘されたのである。担当授業科目は、社会環境システム論及び環境経済学の2科目である。神戸商科大学でも商経学部管理科学科の4年生の卒論指導を数人担当したが、安田研究室として本格的な研究室活動が展開されたのは筑波大学に着任した1977年からである。

     私は、元々東京工業大学理工学部数学科オペレーションズリサーチ専攻国沢清典ゼミの卒業であるが、慶応大学経済学部福岡政夫先生の土曜研究会(理論経済学ゼミ)に在学中から出させて頂き、経済学を中心とする社会科学に強い関心を抱いていた。その頃東京工業大学工学部に社会工学科が新設され計画数理講座の助手(文部教官)に採用された。鈴木光男教授、熊田禎宣助教授の下で、最初は社会的計画のためのゲーム理論、後に都市問題の政策科学の研究を進めた。神戸商科大学では都市・地域政策学の研究を行い、管理科学科のシミュレーションの講義も担当した。

     戦後の日本は高度経済成長政策を選択し、物質的には豊かな国に発展したが、1960年代後半から成長の代償ともいうべき水俣病に象徴される公害問題に悩まされる様になった。このような社会的背景の下に、環境問題を総合的、学際的に研究・教育する大学院環境科学研究科の設置が新構想大学である筑波大学で進められたのである。筑波大学大学院環境科学研究科の発足とともに、筑波大学安田研究室が発足したわけである。

     

  2. 環境政策学分野の開発

     筑波大学に着任してからは、環境政策学の研究が中心テーマとなった。当時の初代研究科長故辰巳修三教授のリーダーシップ下に、環境科学研究科においては、北上川流域、霞ケ浦、琵琶湖などを研究対象地域とした共同研究が多数行われた。私は、これらの共同研究プロジェクトに積極的に参画した。川喜田二郎教授、橋本道夫教授等の錚々たるメンバーと一緒に環境政策学分野の開発と体系化に日夜励んだ。その中で、私の指導する修士論文研究でも環境政策学を方向づけるような優れた研究がたくさん行われた。そのようなプロセスを経て、安田研究室の研究テーマは、「大規模な開発プロジェクトや環境政策の変更が地域社会システムに与えるインパクトの総合評価および公平な費用負担」という現在の研究課題に固まってきたのである。

     安田研究室の中心的研究テーマは、この数年は「ごみリサイクル問題」である。昭和60年(1985年)に筑波で科学万博が開かれ、その時安田研究室が主催して行った「つくば方式空き缶回収リサイクル方式」が大きな反響を呼び、それがキッカケとなり、ごみリサイクル問題の研究に傾いて行った。循環型社会システムの構築に関する研究が安田研究室の共通課題である。

     

  3. 現在の安田研究室

     この数年、安田研究室を希望する学生が急増している。現在は、卒業論文研究の4年生3人を含めて総勢約30人の大所帯となっている。博士課程社会工学研究科3人の他は殆どが修士論文研究の大学院生である。最近は、環境政策学を求めて、経営・政策科学研究科の学生が毎年2〜3人来る。そこで、昨年1997年度から研究グループ(サブゼミ)を形成して研究を進める研究体制を作り上げてきた。現在、次の3グループが研究体制の核となっている。循環型社会システムを構築するために、経済学を中心とする社会科学的・政策科学的アプローチ、都市工学・環境工学を中心とする工学・技術的アプローチ及び生物学・農学を基礎としたプロジェクト評価論アプローチを主たる研究テーマとしている。

    1. 循環経済学グループ(Circulative Economics and Social Sciences)

      循環型社会を構築するための経済システムの改革を研究することがこのグループの主たる目的である。単なる経済学の研究ではなく、新しい地球環境経済学を再構築することを目指している。このような新しい経済学を「循環経済学」(Circulative Economics)と呼ぶことにしよう。研究題目は次のようなものを考えている。

      • 廃棄物処理有料化政策の総合評価
      • 容器包装廃棄物のリサイクルシステムの開発と総合評価
      • 預り金払い戻し制度(Deposit Refund System)の政策提案と総合評価
      • 企業の環境管理システム (ISO14001)の開発と評価

       

    2. 循環工学グループ(Circulative Engineering and Social Technology)

      循環型社会を構築するための社会的技術(Social Technology)の開発を目指し、工学的アプローチを展開することがこのグループの主たる目的である。「循環工学」(Circulative Engineering)として体系化することをねらっている。主たる研究テーマは次のとおりである。

      • 廃棄物固形燃料化政策の開発と総合評価
      • ごみリサイクルシステムの環境影響総合評価(Life Cycle Assessment, LCA)
      • ダイオキシン等の化学物質のリスク便益分析

       

    3. 循環共生学グループ(Circulative Co-existence and Ecology)

      生物学や農学等を基礎として、循環型社会システムを構築するために生物としての人間が地球環境の中で如何に共存・共生して行くことが出来るかを探ることが主たる目的である。「循環共生学」(Circulative Co-existence)として体系化していくことを目指している。主たる研究テーマは次ぎのような課題を考えている。

      • 生ごみのコンポスト化の新しいシステムの開発と総合評価
      • 食品残さ副産物の飼料化システムの開発と総合評価
      • 自然環境保全の仮想的市場評価法(CVM)による評価法の開発と適用

     


Back to  ホーム