関東学院大学経済学部

安田八十五研究室

特別研究報告シリーズ

 

No.2006−03−02

 

拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における

容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーション

―環境省重点研究成果―

 

by

 

安田 八十五

 

「容器包装リサイクルへの拡大生産者責任の導入可能性」

公開シンポジウム

日本型EPRの制度化に関する政策提言

基調講演

 

未完成(禁無断転載)

修正版:2006年 411日(

 

平成183月2日(木)14:00−17:30

会場:関東学院大学関内メデアセンター

 

環境政策学者(工学博士)

安田八十五 Dr.  Yasoi YASUDA

2368501横浜市金沢区六浦東1-50-1
関東学院大学経済学部教授

研究室直通電話:TEL&FAX:045-786-9802
事務室TEL: 045-786-7056 事務室FAX: 045-786-1233

電子メイル: yasuda85@kanto-gakuin.ac.jp

安田八十五専用ホームページ:http://www.yasuda85.com


拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における

容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーション

 

安田八十五

 

1.序論:容器包装リサイクルの現状と課題

現在、家庭から排出される容器包装廃棄物は、一般廃棄物(家庭系自治体廃棄物)全体では容積比で約6割、重量比で約3割を占めている。日本の一般廃棄物は、バブル経済の崩壊した199293年を境に微増ないし横ばいの傾向ではあるが、それでも毎年約5,000万トン排出されている。単純に計算しても、その内の約3,000万トンが、この容器包装廃棄物であることになる。そこで、これら容器包装廃棄物の資源化を目的に容器包装リサイクル法、正式名称「容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」が1997年(平成9年)4月に一部施行、2000年(平成12年)4月に完全施行された。19974月施行時点の内容としては、ガラスびん色別3種と飲料・醤油用ペットボトルの4品目であったが、20004月からは、他のプラスチック製容器包装が加わり、現在の4分別10品目が対象になっている。消費者が容器包装廃棄物を分別排出し、市町村(自治体)が分別収集し、事業者(製造業者)が再商品化(再資源化)するという効果的なリサイクルシステムの確立を目指すというものであった。ただし、アルミ缶、スチール缶などは、すでに、リサイクルの仕組みがあり資源化率も高く、また、市町村で分別収集されることにより有価物として取引されリサイクルされるため、事業者の再商品化義務の対象外となる。一部では、費用の負担が偏っているなどの問題がある。容器包装リサイクル法は、施行10年後に改正を行なうことになっているので、その時にこの費用負担の問題も取り上げられると期待されていた。

容器包装リサイクル法の施行に伴い、各自治体でのゴミの収集の仕方が変化してきた。今までよりも細かく分別されるようになってきている。また、拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)という理論があり、これは生産者が製品の製造・流通・消費時だけでなく、消費後に製品が廃棄されてごみ処理・リサイクルされる段階まで生産者の責任を拡大しようとする考えである。これにより、生産者は、回収、処理の容易な製品を製造するようになり、リサイクルを考えに入れて材料や部品を選択するようになるのではないかと考えられている。容器包装リサイクル法をスムーズに推進させるには、拡大生産者責任の考え方を取り入れた方が効率的かつ公平な運用が可能になるといわれてきた。

現在、日本では容器包装リサイクル法の改正が大きな社会的問題になっている。ことに、容器包装リサイクル費用における自治体の費用負担が大きく(約8割)、それに対して製造業者の負担が極めて低く(約2割以下)、自治体の財政を圧迫している。最近、環境省・経済産業省の合同審議会の答申が出されたが、極めて問題の多い答申案である。これに関連して、安田八十五を代表者とする容器包装リサイクル研究会は、環境省科研費重点研究プロジェクトに採択され、『容器包装の分別収集・処理に係る拡大生産者責任の制度化に関する研究』を平成16年度から3ヵ年計画で進めています。平成16年度(2004年度)は、欧州ことにフランスとドイツの拡大生産者責任制度(Extended Producer Responsibility、以下EPRという)の普及割合や効果等を調べた。平成17年度(2005年度)は、韓国のEPRの導入状況の現地海外調査を行った。

平成16年度の研究成果としては、安田 八十五編著(2005)および安田 八十五・李 松林(2005)などがある。容器包装等のリサイクルに関する費用「リサイクル費用」を定義し、具体的に測定と評価をしている。また、リサイクル費用を容積ベースで算定するときに必要な「逆かさ密度」を計測するためのかさ比重調査の計測結果を用いて、主要な6都市のアルミ缶・スチール缶、ガラスびん、ペットボトルのリサイクル費用を重量ベースおよび容積ベースで算定し、都市間で比較をしている。

平成17年度研究では、これまでのリサイクル費用の研究を踏まえ、川崎市・横須賀市・東京都新宿区等6都市を追加し、そのリサイクル費用を重量ベースと容積ベースで算定し、他都市との比較を行ない、分析、評価し、課題も含め検討する。以上の分析に基づいて、現在提案されている政府審議会の答申案および拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーションを実行する。最後に、日本型EPRの制度化に関する政策提言を行う。

 

2.全国における4品目別リサイクル費用の測定と評価

容器包装リサイクル法に基づいて、4品目10分別された容器包装に係わる資源ゴミの収集・処理・保管をするのに、日本全国の自治体では、2003年度(平成15年度)で合計約3000億円の費用を要したとのデータが環境省から公表されている。約3000億円の内、アルミ缶・スチール缶・ガラスびん・ペットボトルにどの程度の割合で費用を要したのかを2003年度(平成15年度)の生産量(表1を参照)を各々の500ml当たりの重量で割り500ml換算の本数(表2を参照)を計算し、6都市平均の500ml一本当たりのリサイクル費用(表3を参照)をかけて算定した。容積ベースに関しては冬季の「逆かさ密度」(安田八十五(2006)を参照)を用い、500ml一本当たりのリサイクル費用のデータを掛けて測定した。その結果を表4に示す。

 

1 容器包装材の品目別生産量・リサイクル率の推移    (単位:トン)

 

 

アルミ缶

スチール缶

ガラスビン

ペットボトル

2003年

生産量

297,047

911,000

1,561,000

436,556

リサイクル率

81.8%

87.5%

90.3%

61%

2004年

生産量

303,169

908,000

1,554,000

513,712

リサイクル率

86.1%

87.10%

90.7%

62.3%

データの出所:アルミ缶=アルミ缶リサイクル協会、スチール缶=スチールリサイクル協会、ガラスービン=ガラスびんリサイクル促進協議会、ペットボトル=PETボトルリサイクル推進協議会。

 

500ml当たりの容器重量は アルミ缶=20g、スチール缶=50g、ガラスびん=190g、ペットボトル=38gとした。データの出所=容器間比較研究会(2001)「LCA手法による容器間比較報告書<改定版>」。

 

全国における品目別リサイクル費用の算定方法は、次のとおりである。

1)500ml換算の本数=生産量×500ml当たりの重量(表2に示す)

2)全国の品目別リサイクル費用(重量ベース)

=500ml当たりリサイクル費用(重量ベース)×500ml換算の本数

3)全国の品目別リサイクル費用(容積ベース)

    =500ml当たりリサイクル費用(容積ベース)×500ml換算の本数

 

22003年度における4品目の個数換算した生産量(1個当たり500ml換算)

 

アルミ缶

スチール缶

ガラスびん

ペットボトル

各容器重量

20g

50g

190g

38g

2003年度生産量(トン)

297,047

911,000

1,561,000

436,556

2003年度本数(換算)

14,852,350,000個

18,220,000,000個

8,215,789,474個

11,488,315,789個

 

 


 

3 自治体の容器別リサイクル費用(500ml一本当たり)(2003年データ使用)単位:円

 

アルミ缶

スチール缶

ガラスびん

ペットボトル

横須賀市

容積ベース(冬)

0.17

1.76

2.16

2.36

容積ベース(夏)

0.65

2.45

2.99

3.05

重量ベース

-0.72

2.15

9.49

1.87

横浜市

容積ベース(冬)

2.65

4.47

5.15

5.13

容積ベース(夏)

4.52

6.56

7.46

7.44

重量ベース

0.26

5.52

20.95

4.68

日野市

容積ベース

-

-

-

-

重量ベース

-1.28

1.68

8.76

1.74

仙台市

容積ベース

1.50

2.61

2.84

2.84

重量ベース

-0.52

2.11

8.59

1.72

北九州市

容積ベース

0.17

4.19

4.70

3.89

重量ベース

-0.84

2.98

10.60

2.86

札幌市

容積ベース

5.02

6.60

7.09

7.36

重量ベース

1.63

8.16

34.61

7.27

柏市

容積ベース

-

-

-

-

重量ベース

-1.52

0.60

12.89

0.88

全体(横須賀市を除く)の平均

容積ベース(冬)

2.34

4.47

4.95

4.80

容積ベース(夏)

2.80

4.99

5.52

5.38

重量ベース

-0.38

3.51

16.07

3.19

 

4.全国の4品目別リサイクル費用           単位:円

 

リサイクル費用(重量ベース)

割合

リサイクル費用(容積ベース)

割合

アルミ缶

-5,643,893,000

-1.9%

34,754,499,000

11.6%

スチール缶

63,952,200,000

21.3%

81,443,400,000

27.1%

ガラスビン

132,027,736,842

44.0%

40,668,157,895

13.6%

ペットボトル

36,647,727,368

12.2%

55,143,915,789

18.4%

4品目合計

226,983,771,210

75.7%

212,009,972,684

70.7%

その他品目

73,016,228,790

24.3%

87,990,027,316

29.3%

全品目

300,000,000,000

100.0%

300,000,000,000

100.0%

 

 4品目のリサイクル費用を合計するとそれぞれ容積ベースでは約2120億円、その他6品目には残り約880億円、また、重量ベースでは約2270億円、その他6品目には約730億円を要したのではないかと推測される。容積ベースでは、リサイクル費用にそれ程のばらつきはないが、重量ベースになると、アルミ缶に便益が出たり、重量のあるガラスびんのリサイクル費用に占める割合が大きくなるなどばらつきが出た。

 

3.EPR導入による費用負担の政策シミュレーション

資源ゴミを処理する際の考え方に拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)の理論がある。この理論は、OECD(経済開発協力機構)が中心となって提唱している。この考えに基づく制度としては、ドイツの容器包装リサイクルシステムである、「デュアル・システム(DSD)」がよく知られている。

現在、日本では、容器包装廃棄物を処理・再商品化する際の費用負担割合は、自治体が約8割、企業側が約2割といわれている。実際に全国の自治体では全体で約3000億円の費用を要しているが、再商品化する企業側の負担は約400億円で、総リサイクル費用3400億円のうち11.8%しか負担していない。自治体側は88.2%負担を意味する。自治体での負担額が多いということは、それだけ多くの税金が資源ゴミの処理に充てられているということである。処理をするのに同じ費用を負担しなければならないのなら、例えば、商品を購入する際の価格に転嫁するなどの方が、費用を公平に負担できるのではないかと考えられる。また、商品に処理をする際の費用が転嫁され、消費者が一部負担するならば、生産者側も費用負担しやすくなるのではないかと思われる。

安田八十五は、1990年からほぼ毎年欧州などにおいてごみリサイクル政策に関する海外現地調査を実施してきた。平成16年度の調査結果の詳細は、平成16年度研究報告書:安田八十五編著(2005)を参照されたい。その結果を要約した者が、表5である。表5に示すように、容器包装廃棄物のリサイクルが進んでいるドイツ・フランスでは、ドイツは100%企業側が費用負担、フランスでは収集・輸送費用は自治体が50%、企業側が50%の負担割合となっている。特にドイツでは1991年以降、自治体・市町村ではなく、製造業者側が回収・再利用しなければならないという法律(政令)を施行した。このためEPRの考えがかなり実現化されている。今後の日本での容器包装廃棄物に係わる費用負担割合を検討していくにあたり、2003年度に要した費用を元にシミュレーションしてみた結果が表6である。表6は、縦軸(列)が政策代替案、横軸(行)が容器包装リサイクル費用配分シミュレーション結果を示す。その計算方法ついては順次説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表4 容器包装リサイクルシステムの国際比較(ドイツ、フランスおよび日本)

(2004年度秋期調査)

 

 

収集・輸送

再資源化

コメント

責任主体

費用負担

責任主体

費用負担

拡大生産者責任の実現度

ドイツ

製造業者

100%製造業者

製造業者

100%製造業者

すべて製造業者の責任

製造業者が100%費用負担

消費者に価格転嫁可能

フランス

自治体

50% 自治体

50%製造業者

製造業者

製造業者

自治体が収集責任

製造業者は大部分費用を負担(約65%)

日本

自治体

100% 自治体

製造業者

製造業者、

一部自治体

自治体が収集責任

自治体が大部分費用負担(約80%)

製造業者負担は約20%

 


 

6 リサイクル費用の負担割合の政策シミュレーション結果

 

 

リサイクル費用

総リサイクル費用の主体別負担

排出者(消費者・住民)負担費用

収集・輸送費用

再商品化費用(再資源化費用)

総リサイクル費用

排出者(消費者・住民負担費用

自治体負担費用

事業者負担費用

総リサイクル費用(%)

日本の現状

0円(名目上)

3000億円

400億円

3400億円

0円(名目上)

(0%)

3000億円
(88.2%)

400億円
(11.8%)

3400億円
(100%)

市民ネットによる政府審議会提案導入時の解釈

750億円

3180億円

-315億円

3615億円

750億円
(20.7%)

3180億円
(88.0%)

-315億円
(-8.7%)

3615億円
(100%)

安田八十五による政府審議会提案導入時の解釈

540億円

3180億円

-189億円

3531億円

540億円
(15.3%)

3180億円
(90.1%)

-189億円
(-5.4%)

3531億円
(100%)

安田八十五による環境税導入時の解釈

390億円

2985億円

18億円

3393億円

390億円
(11.5%)

2985億円
(88.0%)

18億円
(0.5%)

3393億円
(100%)

ドイツ方式を導入した場合

0円(名目上)

3000億円

400億円

3400億円

0円(名目上)

(0%)

0円
(0%)

3400億円
(100%)

3400億円
(100%)

フランス方式を導入した場合

0円(名目上)

3000億円

400億円

3400億円

0円(名目上)

(0%)

1500億円
(44.1%)

1900億円
(55.9%)

3400億円
(100%)

 

 

@ 政府審議会答申案の市民ネットによる解釈(表62段目の政策シミュレーション結果)

日本の現状において、仮にドイツ方式またはフランス方式を導入した場合、自治体・事業者の負担割合が、大幅に違ってくる。また、中央環境審議会により容器包装リサイクル法の改正案が出されたが、この案に当てはめると、自治体の費用負担はさらに増加し、一方で事業者の費用は減少する。そして新たに消費者の負担が大幅に増加するとの試算が「容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネットワーク」から出されている。同ネットワークによると、自治体は追加費用として180億円増加し、事業者に関しては、再商品化費用が多少増加するが、レジ袋を有料化するということなので、レジ袋の売り上げ分が相殺され、715億円の負担軽減となる。715億円の内訳を以下に示す。

 

65億円+400億円−750億円−300億円=−715億円

 

65億円:ペットボトルの再商品化費用(平成13年度の91億円に比べ平成18年度は26億円になるのではないかと推測されるので、その減少分)

400億円:その他プラスチックの再商品化費用の増加分

750億円:レジ袋の売り上げ収入(=5/枚×150億枚)

300億円:レジ袋製造費の減少分(=2/枚×150億枚 前年度は2/枚×300億枚=600億円だったが2/枚×150億枚=300億円分しか製造しない)

 

 現在、レジ袋の年間生産量は300億枚である。レジ袋を15円で有料化するのでレジ袋の利用量は50%減少すると推測される。その結果、レジ袋は製造するのに12円を要し、利用量が50%減少するということは、単純に300億枚の生産量が半分の150億枚に減少するということである。これにより製造費用は150億枚×2円の300億円の軽減になる。

以上により事業者の負担は、軽減されるものと推測されている。一方でレジ袋が有料化されれば、消費者の負担は750億円と大幅に増加する。現在、消費者の負担は名目上0円だが、ゴミを排出する際の分別や洗浄作業などは、数値化されないだけであり、時間的に拘束されるなどして実質的な負担は増大している。

 

A 政府審議会答申案の安田八十五による解釈(表6の3段目の政策シミュレーション結果)

審議会提案の導入に関して、筆者による試算では、レジ袋を15円に有料化すると、レジ袋の利用量は64%減少するのではないかと推測している(安田八十五・横山雄介(2001)を参照)。これによると事業者は589億円の軽減になる。589億円の内訳は以下のようになる。

 

65億円+400億円−540億円−384億円=−589億円

 

65億円:ペットボトルの再商品化費用(平成13年度の91億円に比べ平成18年度は26億円になるのではないかと推測されるので、その減少分)

400億円:その他プラスチックの再商品化費用の増加分

540億円:レジ袋の売り上げ収入(=5/枚×108億枚)

384億円:レジ袋製造費の減少分(=2/枚×192億枚 前年度は2/枚×300億枚=600億円だったが2/枚×108億枚=216億円分しか製造しない)

 レジ袋の使用量が64%削減されると仮定すると、必然的にレジ袋の生産量が減少するので、50%削減仮定時より事業者のレジ袋の売り上げ収入は増加しない。逆に、製造費の方はさらに減少する。合計すると−589億円になり、50%削減仮定時ほどではないが、それでも事業者の負担は大幅に削減されることに変わりはない。

 

B 環境税(レジ袋税)を導入した場合の安田八十五による解釈(表6の4段目の政策シミュレーション結果)

 もう一つ、環境税(地方目的税)として導入した場合におけるリサイクル費用の負担割合シミュレーションを行なった(表5を参照)。例えば、ある自治体でレジ袋に5円の環境税を導入した場合、事業者は10円でレジ袋を売らざるを得ない。レジ袋が1枚10円に有料化すると、レジ袋の利用量は87%減少すると推測される(安田八十五・横山雄介(2001)を参照)。

そしてレジ袋の売り上げは390億円になるがこの内、半分の195億円は環境税として自治体の収入に、残りの195億円がレジ袋の売り上げとして事業者に入る。また、この場合の事業者の負担費用を以下に記載する。

 

65億円+400億円−195億円−522億円=−382億円

 

65億円:ペットボトルの再商品化費用(平成13年度の91億円に比べ平成18年度は26億円になるのではないかと推測されるので、その減少分)

400億円:その他プラスチックの再商品化費用の増加分

195億円:レジ袋の売り上げ収入(=390億円÷2

522億円:レジ袋製造費の減少分(=2/枚×261億枚 前年度は2/枚×300億枚=600億円だったが2/枚×39億枚=78億円分しか製造しない)

 

しかしながら、環境税の導入を実現させるとなると、事業者と排出者(消費者・住民)の理解を得るために相当な議論を要するのではないかと思われる。

 

C       ドイツ方式を導入した場合の安田八十五による解釈(表6の5段目の政策シミュレーション結果)

 次にドイツのDSD方式を導入した場合は、製造業者が100%負担することになり、リサイクルの総費用3400億円は、すべて製造業者が負担することになる。

 

D       フランス方式を導入した場合の安田八十五による解釈(表6の4段目の政策シミュレーション結果)

フランスのエコアンバラージュ方式を導入した場合は、収集・輸送費用の50%を製造業者が負担することになり、再資源化費用もすべて製造業者が負担するので、全体費用の約65%が製造業者が負担する結果になる。

 

 

5に負担費用を割合に換算した数値を記載してあるが、審議会提案を元に仮定していくと、事業者のリサイクル費用はレジ袋の有料化により相当額が相殺され負担は大幅に軽減される。逆に自治体の負担は微増し、排出者(消費者・住民)負担は審議会提案に比べると大幅に増加する。

以上の分析と評価によれば今回の審議会提案では、拡大生産者責任の論理がすり替えられていると言ってよい。

日本では20006月に「循環型社会形成推進基本法」を制定した。この方針の中に「拡大生産者責任」の一般原則を確立し、これを踏まえた措置をするという施策が明示されているが、ドイツなどに比べるとまだ徹底されてないところが多々あるので、日本でも拡大生産者責任(EPR)の確実な定着が望まれる。

 

4.容器包装リサイクル法改正への政策提言

以上の分析に基づき以下のような優先順位付きで日本における容器包装リサイクル法への政策提言を行いたい。

1.リデュ―ス・リユースを含んだドイツDSD方式の日本への適用

 

2.一定期間経過後ドイツDSD方式の採用(容リ法改正ネットの提案はほぼこの案に近い)

3.

日本的企業主導型デポジットリファンドシステムの採用(10円の預かり金、5円の払戻金、残額5円は企業のリサイクル費用への補助金)=変型カナダ的企業主導型デポジットリファンドシステム

4.

日本的自治体主導型デポジットリファンドシステムの採用(10円の預かり金、5円の払戻金、残額5円は自治体のリサイクル費用への補助金)

5.

フランスEE方式の日本への適用(収集費用の企業負担割合=50%)

6.

変型フランスEE方式の日本への適用(収集費用の企業負担割合<50%

 

5.結論と課題

5.1.結果の要約

フランスおよびドイツにおける容器包装リサイクル政策に関する現地実態調査により、各国におけるEPR導入の実態が明らかになった。ドイツは、EPRがほぼ100%実現されており、製造者責任と費用負担が実行されているが、フランスは、収集費用の約50%を製造者が負担しており、全体では約65%程度、EPRが実行されていることが明らかにされた。これに対して、日本では、約20%以下しかEPRが実現されていないことが明らかになった。今後の日本での容器包装廃棄物に係わる費用負担割合を検討していくにあたり、2003年度に要した費用を元にシミュレーションしてみた結果が表6である。現状と様々な代替的ケースの政策シミュレーション結果が、金額表示および主体別割合表示で明らかにされた。現状は、自治体負担が約3000億円、事業者負担が約400億円の合計約3400億円と推定されているが、拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーションを行った結果、各ケースによって、費用負担割合が大幅に変わることが明らかになった。環境省等の審議会の答申案は、事業者負担が減少し、消費者負担および自治体負担が増大するので、EPRの実現とは程遠いことが明らかになった。

 

5.2. 今後の課題

拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーション結果を、公開シンポジウムおよび記者発表などで広く社会に公表し、日本においては、どのような政策代替案が適切かの議論を呼びかけていく必要がある。

 

【主要参考文献】(発表順)

1.        安田八十五(19932001)「ごみゼロ社会をめざして―循環型社会システムの構築と実践―」 鞄報、平成55月(初版)、平成125月(8版)

2.        安田八十五(19942000)「アメリカン・リサイクル―環境問題に挑戦する米国の企業と市民―」 鞄報、平成64月(初版)、平成119月(4版)

3.        安田八十五(2001年)「ペットボトルのリサイクルシステムに関する評価と政策分析」廃棄物学会論文誌(第12巻、第5号、pp.229-234)平成139

4.        安田八十五・松田愛礼(2001)、「飲料容器のリサイクル費用の容器間比較―自治体における飲料容器のリサイクル費用の総合評価―」 12回廃棄物学会研究発表会講演論文集(pp.168-170)平成1310

5.        安田八十五・横山雄介(2001)、「レジ袋削減のための買い物袋有償販売政策の評価」、第12回廃棄物学会研究発表会講演論文集、PP.87−89、平成13年10月

6.        安田八十五・薄井高志(2003)「大都市自治体のごみリサイクル政策に関する分析と評価―北九州市・名古屋市および横浜市における事例研究―」 関東学院大学経済経営研究所年報第25集(pp.50-83)平成153

7.        安田八十五・松田愛礼(2003)「自治体における飲料容器のリサイクル費用に関する容器間比較」、(「経済系」、第216集、pp.29-45 )平成157月、関東学院大学経済学会発行

8.        安田八十五・外川健一(2003)「循環型社会の制度と実態―容器包装、家電、および自動車リサイクルの事例研究―」(細田衛士・室田武編「循環型社会の制度と政策」、pp.131-162)平成155月、岩波書店発行

9.        安田八十五・李松林(2004)「自治体の容器包装リサイクル政策に関する分析と評価―横浜市等の大都市自治体における事例研究―」 関東学院大学経済経営研究所年報(第26pp.66-113)平成163

10.    安田八十五編著(2004)「飲料容器リサイクル再考シンポジウム講演録」飲料容器リサイクルシステム研究会発行 平成163月、60ページ(編著)

11.    安田八十五・李松林(2004年)「横浜市における飲料容器リサイクル政策の分析と評価」 15回廃棄物学会研究発表会講演論文集(pp.223-225)平成1611

12.    安田八十五編著(2005)「容器包装の分別収集・処理に係わる拡大生産者責任の制度化に関する研究 平成16年度研究報告書」 環境省、廃棄物処理等科学研究補助金重点研究、平成173月、200 ページ

13.    李松林・安田八十五・矢野一也(2005)「自治体の容器包装リサイクル費用におけるEPRの導入可能性評価」(第16回廃棄物学会研究発表会講演論文集 pp.209211 )平成1710

14.    安田八十五(2006)「容器包装リサイクルの課題と政策提言―容器包装リサイクルにおける拡大生産者責任の導入可能性(環境省重点研究成果)−」、月刊廃棄物、PP.6267 , 平成18年1月号、鞄報発行

15.    安田八十五(2006)「容器包装リサイクルへの拡大生産者責任の導入−日本へのEPRの導入は、 諸外国に比べてなぜ遅れているのか?−」、アーシアン、平成18年1月号、()地球環境財団発行

16.    安田八十五(2006)(責任編集)「ごみリサイクル問題特集号」、MACRO REVIEW(日本マクロエンジニアリング学会誌)Vol.18 No.1 N0.2 合併号、平成18年3月